バラク氏ら研究チームはそう仮説を唱えて、ちょっと変わったゲーム実験を行いました。

ADHDの方が食料採集の能力に優れていた?

チームはオンライン上で、アメリカ在住の成人457名(平均年齢45.6歳、男性232名、女性217名、その他8名)を被験者として募りました。

人種は白人からアフリカ系アメリカ人、アジア系、ラテン系と多岐にわたります。

被験者には、私たちの祖先がしていたであろう採餌行動を想定して、茂みの中からできるだけ多くのベリーを収穫するゲームに取り組んでもらいました。

ゲーム内では、道の左右に並んだ茂みの各ポイントにカーソルを合わせると収穫でき、採集を続けるごとにその茂みから得られるベリーの数は減っていきます。

被験者は同じ茂みで限界まで採集を続けることもできますし、新しいポイントに自由に移動することもできます。

新しいポイントではまた勢いよくベリーが取れ始めます。

制限時間は8分です。

ゲームのイメージ。カーソルを茂みに合わせるとベリーが採集できる
ゲームのイメージ。カーソルを茂みに合わせるとベリーが採集できる / Credit: David L. Barack et al., Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences (2024)

これと並行して、被験者にはADHD症状をどれだけ持っているかを評価するアンケート調査に回答してもらいました。

その結果、症状に程度の差はあるものの、参加者のうちのやく半数に当たる206名が何らかのADHD症状を持つことが確認されました。

そしてチームは各被験者のADHDスコアとゲームでの収穫量や行動傾向を比較したところ、興味深い発見をしたのです。

ADHDスコアの低い被験者は、同じ茂みポイントに長く留まる傾向があり、他のポイントに移動する回数が少なくなっていました。

これに反して、ADHDスコアの高い被験者は、同じ茂みポイントに留まる時間が短く、収穫量が減ってきたと感じたらすぐに別のポイントに移動する傾向が見られたのです。