例えば、カフェでコーヒーを1杯買うだけでも、タッチパネルに「チップを選択してください」と表示され、15%、18%、20%の選択肢が示されることがあります。
中には「チップなし」の選択肢が目立たない形で配置されており、心理的に押しづらい設計になっていることもあります。
また、レジの店員が目の前で操作を待っている状況では、顧客は断りにくさを感じやすくなり、予定していなかったチップを支払ってしまうケースも多く報告されています。
特に、ハンドヘルドPOS端末(店員が持つ携帯型の決済端末)では、店員が目の前で操作するため、顧客は「見られている」というプレッシャーを感じやすくなります。
一方、カウンタートップPOS(レジに固定された端末)では、店員の視線が直接及ばないため、比較的自由にチップを選べる状況になります。
このような違いが、顧客の心理や店舗の売上にどのような影響を与えるのかについて、研究が行われました。
「チップを払うように」という無言の圧力は、果たして顧客にどんな影響を与えるのでしょうか。
チップ支払い時、顧客は「見られると払ってしまう」が、「再来店率」は下がる
研究チームは、実際の店舗でフィールド実験を行い、さらにオンライン実験でより詳細な心理的メカニズムを分析しました。
フィールド実験では、アメリカのあるビールパブで、2種類のPOS端末を使用し、顧客の反応の違いを分析しました。
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1つは店員が持つハンドヘルド端末(低プライバシー)、もう1つはカウンターに固定されたカウンタートップ端末(高プライバシー)でした。
店員がもつハンドベル端末からチップを選択する顧客は、店員の視線や雰囲気、独特の間により、「チップを支払うように」という無言の圧力を強く感じることになります。