元裁判官の高部眞規子弁護士も以下のように指摘する(2024年3月19日 文化審議会著作権分科会議事録より)。

今の条文は、情報解析というものを30条の4の第2号で、享受し又は享受させることを目的としない場合の例示として挙げています。そのような条文構造からは、情報解析に当たるとしながら享受目的が併存するので30条の4に当たらないという説明の仕方というのは、ちょっと難しいような気がいたします。

必要と認められる限度という、別の要件のところを考えるとか、あるいは、そもそも情報解析に当たらないという場合もあるのかもしれませんけれども、そういったことも今後考えていっていいと思いますし、著作権者の利益を不当に害するかどうかというただし書の要件を非常に狭く解釈すべきだというような説明の仕方も、いまだ判例があるわけではないので、もう少し自由な考え方が今後出されてもいいのかなというふうに感じました。

享受目的が少しでもあれば、30条の4は適用されないとする文化庁の見解は、技術面、資金面で米国や中国に太刀打ちできない日本の生成AI事業者を法制度面でも縛ることになり、競争上不利な立場に追いやりかねない。

30条の4に対しては、最近でも新聞協会が「生成AIにおける報道コンテンツの無断利用等に関する声明」で著作権法改正を要望している。こうした権利者の要望に対して、文化庁の「AI と著作権に関する考え方について」42頁は以下のようにまとめている。

本考え方は、その公表の時点における、AI と著作権に関する本小委員会としての考え方を 示すものであり、現時点において直ちに著作権法の改正を行うべきといった立法論をその内 容とするものではないが、今後も、特に以下のような点を含め、引き続き情報の把握・収集に努め、必要に応じて本考え方の見直し等の必要な検討を行っていくこととする。 ① AI の開発や利用によって生じた著作権侵害の事例・被疑事例 ② AI 及び関連技術の発展状況 ③ 諸外国における AI と著作権に関する検討状況