IEAによると、電気自動車、人工知能、データーセンターなどは莫大な電力を必要とすることから、世界のエネルギー需要は年々増加してきた。それを受け、原子力発電が世界的に復活してきている。ウィ―ンに本部を置く国際原子力機関(IAEA)は「原子力エネルギーのルネッサンスを迎えてきた」と述べているほどだ。

40カ国以上が原子力発電の拡大を目指し、約420基の原子炉から生産される原子力発電量は今年、新たな生産記録を達成すると予想されている。日本では原子力発電が再開され、フランスでは原子炉のメンテナンスが完了、新たな原子炉が中国、インド、韓国、ヨーロッパをはじめとする各地で稼働している。IEAは、2025年の原子力発電量を約2,900テラワット時(TWh)と予測しており、これは全電力生産の約10%を占めることになる(2023年には2,742TWh、2024年には暫定的に2,843TWhが生産された)。ちなみに、原子力発電は水力発電に次いで二酸化炭素排出の少ない電力源として第二位の地位を占めている。

原発開発では問題もある。IEAは原子力発電の拡大が中国とロシアの技術やウランといった資源に大きく依存しているため、将来的な依存リスクを伴うと指摘している。2011年に発生した日本の福島原発事故後、原子力発電は一時的に後退したが、現在の発展を主導しているのは中国だ。2017年以降、世界で建設が始まった52基の原子炉のうち、25基が中国製だ。さらに、インド、トルコ、エジプト、ロシア、イギリス、韓国などでも新たな原子炉の計画や建設が進んでいる。アメリカやフランスなどの伝統的な原子力発電国は、原子力発電所の近代化の遅れやコスト増に直面している。原子力発電は従来から政府の資金援助に依存してきたが、IEAは原子力発電の迅速な拡大には民間投資家の参加が求められると指摘している。

一方、ドイツの脱原発路線は2000年代初頭の社会民主党(SPD)と「緑の党」の最初の連合政権下で始まり、CDU/CSU主導のメルケル政権に引き継がれていった。その後、メルケル首相率いる連立政権が2009年、原子炉の稼働期間を大幅に延長したが、2011年の日本・福島での原発事故を受けて政策が転換され、撤退が加速した。そして社会民主党(SPD)、「緑の党」、「自由民主党」(FDP)の3党から成るショルツ連立政権は2021年12月、政権発足直後、「再生可能なエネルギーからより多くのエネルギーを生成する国になる」と表明し、その課題を「巨大な使命」と呼んできた。