さらに、米トヨタはHRCの企業平等指数において完璧なスコアを獲得していたが、こうした平等指数など、第三者ランキングへの参加を終了することも決定した。

米トヨタの方針変更の発表を受け、「企業の中立性が確保されれば、消費者の核心的な信念を侵害しないため、ビジネスは成功するだろう」という歓迎の声も聞かれる。

米トヨタも反DEI活動家からの批判をかわそうとして、発表した方針転換ではないのだろうが、企業サイトには、いまでもDEIの大切さが記載されている。

Toyota USA | Diversity and Inclusion

今後、米トヨタがどのように多様性とビジネス目標のバランスを取っていくのかが注目される。

トヨタ自動車の公式見解

トヨタ自動車の公式企業サイトには、ESG:社会のひとつとして、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)について、以下が記載されている。 

【ありたい姿】 ・自動車会社からモビリティカンパニーへの転換に向けた従来領域のたゆまぬ変革と新領域へのチャレンジに取り組み、多様な才能や価値観を持つ人材が最大限能力を発揮

【取り組み事項】 ・多様な生き方・働き方を尊重し、一人ひとりの意欲・能力に応じた活躍機会を提供 ・性別、年齢、国籍、人種、民族、信条、宗教、性的指向、性自認、障がい、配偶者や子の有無などを含むいかなる理由であれ差別を認めない ・ハラスメントのない、風通しの良い職場づくり

我が国の政府や財界、マスコミなどは、今でもDE&Iを強化しようとしている。そうした国内の空気を読んだうえで、この公式企業サイトは書かれているのであろう。奥歯に物が挟まったような微妙な言い回しになっており、具体的なことは何も語っていない。

米国と同じく、我が国でもDEIやその他のソーシャル・イニシアチブがビジネスを進めていくうえでの「徒花」だとしたら、菅首相の「ネットゼロ、カーボンニュートラル」宣言に反対した豊田氏のように、DEIというイデオロギーに対してもトヨタ独自の撤退宣言を行うという気骨を示して欲しいものである。