今回の書店振興策の柱は①キャッシュレスレス決済の手数料の軽減②書店のDX(販売状況のデジタル化)の推進③書店と図書館の連携④新規の出店への交付金付与などです。効き目がありそうな振興策、あまりなさそうな振興策がまじっています。さらにもっと掘り下げてほしい論点も欠けています。
私が重視するのは、出版物は異常に返品率が高く、出版社の経営を圧迫している問題です。書店に出荷した出版物のうち、書籍は33%、雑誌は44%も返品されています。「配本→返品→再配本」を何度か繰り返しても、最後は断裁(廃棄)処分ですから、出版社の損失になります。製造業の中で際立って高い返品率です。他の業界なら経営が成り立たないはずです。
返品率が高いのは、まず販売データの管理が甘いことです。AI(人口知能)を使って、本も読ませ、適正な発行部数を予測することです。配本は適正か、返本はどうなっているかもAIで分析する。ある期限(1年)がすぎたら、値引きできるようにする。再販制度のもとで、店頭における値引きは禁止され、売れなかった出版物は出版社が定価で引き取ってくれるので、安易な仕入れになりがちです。
売れ筋の本は中小規模の書店ではすぐに売り切れてしまい、補充に日数がかかり、そのうちに賞味期限(読みたい気持ち)が切れてします。それを防ぐには、売り切れ状態(欠本)をリアルタイムでつかみ、増刷し速やかに補充するようにする。コンビニはスーパーでやっていることです。
今の再販制度を修正し、ある程度の期間(1年とか)を過ぎたら、書店の判断で値引きできるようにする。教科書的な専門書は売れるサイクルがありますから、値引きはしない。せっかく、書店員が選ぶベストセラーを表彰する「本屋さん大賞」が大きなニュースとして扱われるようになったのですから、取次会社(配本会社)の仕切りではなく、売る側の本屋さんもAIを使った予測を重視し、配本を要求する。売れ残りは値引きし、売り切るようにする。こうした工夫が必要です。