もちろん、人間は多少の差こそあれ基本的には主観的な生き物で、それ自体問題がある訳では無い。この記事だって主観的な意見を述べているものである。問題は本来、客観的に扱うべき事項を、本人が気づかないまま主観的な発言として投稿してしまう時に起きる。
たとえば酒や煙草が健康や寿命を削るという研究結果に対して、「自分の祖父は毎日、酒もタバコもやったが90歳まで生きたぞ!だからこの研究はうそ!」といった投稿をしてしまうことにある。
本来、寿命や健康は個体差が非常に強く出る分野であり、個人的な経験という主観的な観点だけで健康効果を断言してしまっている点に問題がある。件についていえば、元々その人物の生命力は平均値より高く、仮に酒やタバコを一切やらなければ、さらに長寿で健康だった可能性を考えることができるだろう。
バカは個人の経験や感覚を、規模の大きい検証結果や統計以上に過信する。そうでなければ「自分の見聞きした経験」という極めて頼りない情報ソースだけで自信満々になることなどできない。
もちろん、科学は日々進歩しているので検証や統計が間違っている可能性も十分あるものの、それを言い出したら何も言えない。少なくとも、すでに行われた先人の検証や統計を考慮した上で、個人の経験や感覚を話すべきなのは言うまでもない。
バカは無知に気づかない
そしてバカは自分が無知であることを知らない。だからこそ、すぐ上から目線で周囲を見下してしまう。
非常にわかりやすいのがコロナ禍で大量にいた「自分は専門家に騙されないぞ!」という一派である。現場で膨大な数の患者を見ている医師に向かって「コロナなんて政府が作ったうそ」なんて自分にはとてもいえないが、ちょっとインターネット検索でかじった情報を寄せ集めて、自分がウイルス学の専門家より詳しいと勘違いしてしまう。
知識というのはあればあるほど、むしろ謙虚な姿勢を獲得する傾向があると思っている。なぜなら自分が深く学ぶほど、それだけ世の中には自分より優秀な人が数多くいて、さらに学びを深めなければいけないという感覚になるからだ。