そのため陸上の動植物は駆逐され、生命は再び海中を生活基盤としなければなりません。
4800通りの未来をシミュレートした結果では、この劇的な無酸素化がわずか1万年の間に進行する可能性があるとのことです。

一方で、酸素の不足を補うように増加するのはメタンです。
酸素濃度が1%を下回ると、地球環境全体が嫌気化(脱酸素化)し、酸素を必要としないメタン生産菌などが大繁殖を起こし、メタンの濃度は1万倍にも膨れ上がります。
酸素呼吸する生物は儚い存在

今回の研究により、地球上に私たちが呼吸可能な酸素濃度が存在するのは、極めて限られた時期に限定されていることが示されました。
地球にとっては、大気中に酸素がない状態が普通であり、私たち人類を含む多細胞生物は、わずかなイレギュラーな状態の上に浮かんでいる儚い存在だったのです。
4800通りの未来を予測した全ての結果は、地球の酸素濃度が現代の1%以上でいられるのは、現在から数えて残り10.8億年前後に過ぎないと算出しています。
この結果は、銀河に数多くの惑星があっても、知的な地球外生命体が地球人類にコンタクトできないという「フェルミのパラドックス」を説明するかもしれません。
エイリアンと地球人が出会っていないのは、地球生命が10億年後に対面するような未来の障壁のためかもしれないのです。
この未来を避けるためには、太陽の光を遮る遮蔽膜を軌道に展開するか、炭酸塩の石から二酸化炭素を放出させるといった人工的な手段が必要となります。
それまで人類の文明が続いていれば、科学の力が地球生命の救世主になるかもしれません。