4800通り全てのシナリオにおいて、10億年後の地球では酸素濃度が現在の1%以下に減少していることが示されたのです(最も酷い場合は100万分の1)。

この結果は、比較的最近になって大気の主成分として登場した酸素が、早々と退場してしまう運命であることを示します。

しかし、なぜ未来の地球では、酸素が存在しないのでしょうか?

次のページで、未来の地球で何が起きるか示していきます。

膨張する太陽が二酸化炭素を奪い植物を根絶やしにしていく

太陽は1億年に1%ずつ光と熱を増している
太陽は1億年に1%ずつ光と熱を増している / Credit:Nature Geoscience

なぜ未来の地球では酸素が失われているのか?

最も重要な要素となったのは、太陽活動の変化でした。

現在、太陽系の主星である太陽は1.1億年に1%の割合で光度を増しています。

これは太陽が属する主系列星は、核融合に必要な水素が減るにつれて活動を増し、膨張してていくという厄介な性質をもつのです。

そのため未来に進めば進むほど、太陽から降り注ぐ熱は増加し、地球は温暖化していきます。

太陽の熱により大気中のCO2が地殻に封じ込められ、植物の光合成が停止して、酸素もなくなる
太陽の熱により大気中のCO2が地殻に封じ込められ、植物の光合成が停止して、酸素もなくなる / Credit:Canva

しかし太陽熱に由来する温暖化では、二酸化炭素の濃度はどんどん減っていきます。

なぜなら温度が上昇すると、地球の地殻に多く含まれるケイ酸塩の風化が進み、大気中の二酸化炭素を吸い込んで(結合して)炭酸塩になってしまうからです。

そのため早ければ3億年、遅くても6億年後には大多数の植物が属するC3植物で二酸化炭素を必要とする光合成ができなくなり、10億年後にはサボテンなどの多肉植物に代表されるC4植物も光合成が止まります。

光合成が止まれば植物は死滅してしまうため、酸素を作る生物がいなくなってしまいます。

また酸素濃度の低下はほかにもオゾン層の崩壊を引き起こし地上には致命的な紫外線が降り注ぐようになります。