この放電では、成層圏や中間圏、さらにその上層に存在する電離層へ電流が流れ込み、空気分子やイオンとの相互作用を通じて徐々に拡散・消失すると考えられています。

特にこの映像では、白いリング状の光が広がっているのがわかります。

これはエルヴス (Elves) と呼ばれる現象で、雷が発生した際に生じる強力な電磁パルス(EMP:Electromagnetic Pulse)が高層の電離層(高度約80〜100km)と相互作用することで発生します。

そこに存在する窒素分子がブルージェットの電磁パルスによって励起され、これが元の状態に戻る際に、リング状の光として発光するのです。

この発光は1ミリ秒未満で消滅するため、通常の観測では捉えにくい現象です。

こうした非常に珍しいブルージェットという現象ですが、どういうきっかけでこの稀な現象が起きるのかはよくわかっていません。

そこでこの研究が着目したのは、この映像の最初に確認できるいくつも雲の中に確認できる発光現象でした。

ブルージェットは青い閃光「ブルーバン」によって発生していた

一般的な雷は雲と地面の間で生じます。

落雷パターンと電荷領域図
落雷パターンと電荷領域図 / Credit:音羽電気工業株式会社

雲の上部が正電荷領域、下部は負電荷領域となっており、正電荷領域である地面と繋がるように雷が走るのです。

しかしブルージェットは、雲の頂上(正電荷領域)と上空の負電荷領域の間で生じる雷です。

ちなみにこの範囲で生じる雷は成層圏にある窒素をイオン化させるため、青色になります。

そして研究チームによると、ブルージェットの発生源は映像の最初にある青い閃光「ブルーバン」にあるのではないかと考えています。

ブルーバン (Blue Bang) とは、雷雲内で発生する短距離放電によって生じる強力な青色の閃光のことです。この放電は、雲の内部の異なる電荷領域が異常に接近することで発生します。