チームは今回、博物館・昆虫館・アマチュア研究者の協力を得て、貴重なナナフシモドキのオスを7匹集めました。

このオス集めだけでも4年の歳月がかかっています。

次にこれらのオスがメスと交尾するかどうかを観察し、その後の繁殖成功率を調べました。

その結果、7匹中3匹のオスはメスと積極的に交尾を行い、精包(交尾を通じてオスがメスに渡す物質)も確認され、その後にメスは通常通り卵を産みました。

ところがDNA解析の結果、メスが産んだ卵から生まれた子どもの遺伝子は、すべて母親と同一のクローンでした。

つまりオスと交尾しても、父親の遺伝子は子供にまったく受け継がれていなかったのです。

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ナナフシモドキのオスの遺伝子は子供に受け継がれていなかった/ Credit: NIBB – 形骸化した性:ナナフシにおいてオスは不要だった!?(2025)

そこでチームはオスの生殖器を詳細に調べてみました。

すると、オスの精巣は発達しておらず、正常な精子が形成されていないことが判明します。

一方、メスの体内にも異常があり、オスの精子を貯蔵する器官が退化していました。

これらの結果から、ナナフシモドキではオスが生まれても正常な生殖機能を持たないため、有性生殖が不可能な状態にあることが明らかになったのです。

研究者らは「ナナフシモドキではオスが稀に出現するものの、もはやオスとしての意味を為しておらず、有性生殖には戻れない状態になっている」と結論づけています。

「オス不要の未来」は生物界に広がるのか?

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Credit: canva

この研究は、単為生殖を続ける生物において、オスが完全に生殖機能を失う可能性を示した貴重な事例です。

オスが生殖に関与しなくなり、メスによる単為生殖が不可逆的に固定されることで、このナナフシモドキは「オス不要の進化」を遂げたといえます。

では、他の生物でも同じことが起こるのでしょうか?

実際、単為生殖を行う生物はナナフシ以外にも数多く存在し、同様の現象が報告される可能性があります。