高齢者に多い「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」は、骨密度が低下し、骨がもろくなる病気です。
これにより、ちょっとしたことで骨折するようになります。
これまでの治療は薬の服用が中心で、効果が現れるまでに時間がかかるという課題がありました。
しかし、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の研究チームは、骨を強化する新たな治療法を開発しました。
この研究では、ヒアルロン酸と骨の主成分を組み合わせたハイドロゲルを骨に直接注入することで、短期間で局所的に骨密度を増加させることができると報告しています。
この画期的な研究成果は、2024年12月13日付の学術誌『Bone』に掲載されました。
目次
- 骨がスカスカになる「骨粗鬆症」と治療の課題
- ハイドロゲル注射で骨を強化する新たな治療法を開発!
骨がスカスカになる「骨粗鬆症」と治療の課題
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骨粗鬆症は、特に閉経後の女性や高齢者に多く見られる病気です。
私たちの体の骨は、少しずつ溶かされ、また新たに作られるという「骨吸収」と「骨形成」を日々繰り返しています。
しかし、老化などが原因でこのバランスが崩れ、骨吸収のスピードが骨形成を上回る時に、骨粗鬆症になると考えられています。
そうなると、骨密度が低下し、ちょっとした転倒や衝撃でも簡単に骨折してしまいます。
例えば、高齢者が自宅で転倒し、股関節を骨折するケースは非常に多く、寝たきりになる原因の一つとなっています。
また、階段でつまずいて手をついた際に手首を骨折するケースや、荷物を持ち上げただけで背骨が圧迫骨折するケースも報告されています。
EPFLに所属するドミニク・ピオレッティ氏も、次のように述べています。
「効果的な予防策がなければ、50歳以上の女性の約40%、男性の約20%が少なくとも1回は骨粗鬆症による大きな骨折を経験します。
そして高齢者の場合、股関節付近の大腿骨頸部の骨折では、骨折後1年以内の死亡率が20%に達し、骨折した人の半数以上が骨折前の活動に二度と戻ることができなくなります」