ファン・デア・ベレン大統領が6日、キックル党首を大統領府に招き、連立交渉を要請した。それを受けてキックル党首は国民党との交渉を開始することになる。社民党のバブラー党首は「自由党と国民党の政権が発足する」と警戒心を高めている。
ちなみに、国民党は5日、ネハンマー党首の後継者が決定するまでストッカー党事務局長を党首代行に選んだ。その結果、キックル党首とストッカー氏の間で交渉が始まることになる。
問題はストッカー氏はネハンマー党首の下で反自由党路線を展開させてきた張本人だということだ。同氏はキックル党首を「彼はわが国の安全のリスクだ」と主張し、「キックル党首は国民を結束させる政治家ではなく、分裂させるだけだ」と言い切り、議会ではキックル党首の眼前で「あなたは議会にいるべき政治家ではない」と糾弾した。そのストッカー氏がキックル党首と果たしてどのような交渉ができるか、といった懸念が囁かれている。それに対し、ストッカー氏は5日、「政治情勢は大きく変わった。わが党は自由党と連立交渉に応じる用意がある」と述べ、過去の自身の発言は大きな支障とはならないことを匂わせている。
同国の政治学者は「政治家の選挙戦中の発言とその後ではまったく違うことがある。自由党と連立交渉へ転換した国民党はその好例だ」と指摘していた。人間はカメレオンではないから、環境に基づいてその色を変えることは出来ないが、政治家は政治情勢が変われば、それに応じて変わる。
「オーストリアの政界」は様々な教訓を提供する教科書だ。いずれにしても、キックル党首主導の「自由党・国民党」連立政権の発足が非常に現実的となってきた。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年1月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。