英国の最初の核実験は1952年10月3日、オーストラリア北西部モンテベロ諸島で「ハリケーン作戦」として実施。米ソに続く世界3番目の核兵器保有国になった。核実験は最後となる1991年までに45回行われた。動員された兵士らは計約2万2000人。

元兵士やその家族らを支援する慈善組織「英国核実験退役軍人協会(BNTVA)」によると、生存者は約2000人である。

BBCの番組は元兵士やその家族、地元民らに取材し、当時の状況を語らせた。爆破の衝撃や健康被害に苦しんでいるという証言はチャンネル4の番組内で元兵士らが話したことと合致する。軍用機に乗ったある兵士は、爆破で発生するきのこ雲を通りぬけて飛ぶように命令された。なんの警告も与えられず、放射能被害を防止する装備もないままだった。別の兵士は、爆心地から14キロしか離れていない場所に待機し、爆発時には防護服を身につけず、目を手で覆うだけだったという。まもなくして爆心地に入って作業をするように言われたが、この時も防護服はなかった。

番組によると、元兵士たちやその子孫の多くが様々な種類のがんを発症し、心臓病、白血病に苦しむ。子供が死産で生まれたり、障がいがあったりした。

隠ぺいの疑念?

番組は、元兵士らへの健康被害について政府が何十年にもわたって隠ぺい工作をしていたのではないかと問いかける。

調査報道ジャーナリストのスージー・ボニフェイス氏は核弾頭の設計、製造および支援に責任を負う「核兵器機関(AWE)」に対し、情報開示請求を出し、政府が数千人の兵士、市民などに行った健康診断についての極秘資料を入手した。これは現在では非公開になっている。文書の中には国防省の官僚が実際に行われた血液検査の実施を否定したことも記されていた。

2023年9月、核実験帰還兵のグループが国防省が保管する医療記録へのアクセスを求める訴訟を起こしている。

BBCは国防省が血液や尿検査の大量の医療文書を保有している可能性があるものの、退役軍人らが開示を求めたところ、「紛失しているか不完全」と言われた、と報じた。政府は退役軍人に対して「記録が隠されているということはない。国防省に請求できる」としている。