また外見の変化についてですが、ご心配なく、ヤギの見た目はクモの遺伝子を組み込まれても普通のヤギとなんら変わりませんでした。

ただ見た目こそ普通のヤギですが、クモ糸を分泌するという点で、それまでの地球上には決して存在しなかった生物なのです。

しかし一方で、ネクシア・バイオテクノロジーズ社は商業的な成功を収めることができず、2009年に破産しています。

その後、米ユタ州立大学やワイオミング大学がこの技術を引き継いで研究を継続しましたが、科学技術が急速に進歩する中、ヤギを用いたクモ糸生産がコストや効率の面であまり得策ではないことがわかってきました。

そのため、現在ではヤギを使ったクモ糸生産は主流ではなく、今ではむしろ微生物を利用した方法が注目されています。

例えば、日本のSpiber株式会社などが、微生物の発酵プロセスを利用したクモ糸のシルクタンパク質の大量生産に成功し、商業化を進めているところです。

これらの技術は今後も衣料品や医療材料など、さまざまな分野での応用が期待されています。

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参考文献

Scientists create ‘spider-goat’
https://www.standard.co.uk/hp/front/scientists-create-spidergoat-6327860.html

Synthetic biology and the rise of the ‘spider-goats’
https://www.theguardian.com/science/2012/jan/14/synthetic-biology-spider-goat-genetics

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。