また、日本では健康保険料も含めて徴収が細分化されていて、一見税金とわからないようなものが徴収されます。例えば介護保険もうそうですし、健康保険や年金も実質税金のようなもの。しかも基礎控除が小さいので収入が低い人、年金生活者にはかなり厳しい仕組みです。イギリスの人からすると、日本の税金の仕組みはサッチャーさんが政治生命を絶つ原因となった人頭税(ポールタックス)と全く同じです。基礎控除が小さく、年収250万円以下の低収入でも国民年金、健康保険料、市民税、県民税、介護保険が免除になりません。この点で日本の税負担は全体として重いと感じられます。

医療制度に関して、日本は私立病院が多く、すぐに治療を受けられる環境が整っている一方で、医師の質にばらつきがあることが課題です。これに対し、イギリスでは医師の数が少なく、待機時間が長いものの、専門医になるための基準が厳しいため、優秀な医師が多いと言われています。

けれど、NHSは常に人員不足が深刻であり、移民の医療従事者が多くを支えています。その中には英語が得意でない医療従事者も含まれるため、対応の質にばらつきが生じることも課題になっています。

――光熱費などのエネルギー価格は落ち着きましたか。

エネルギー価格の高騰もいまだに生活に深刻な影響を及ぼしています。特にガス代が高騰しているため、セントラルヒーティングの使用にコストがかかります。イギリスではエアコンが普及していない家庭が多く、冬場の寒さをしのぐためにセントラルヒーティングを短時間だけ使用する家庭も少なくありません。このようなエネルギー価格の上昇は、イギリスの生活コスト全体を押し上げています。

断熱事情についても、日本とは異なります。イギリスでは断熱材の導入や家のリフォームには非常に高額な費用がかかります。たとえば、私の家で断熱工事を行い、屋根の交換や壁の補修も合わせて実施した際、費用は1,200万円以上かかりました。家の大きさや使用する素材によって費用は異なりますが、どの家庭でも断熱工事を行えるわけではなく、断熱対策が不十分な家庭も多いのが実情です。