さらに「日銀の限界」(幻冬舎新書、野口悠紀雄=元大蔵省)、「日本の経済政策」(中公新書、小林慶一郎=元通産省)など、他省OBの批判論も少なくありません。野口氏は「2%という物価目標は廃棄すべきだ。円安によるインフレの輸入で国民は苦しんでいる。円安是正が物価対策だ」とまで主張しています。
日銀の次期審議員に小枝淳子・早大教授が選出される予定で、これで政策決定委員会(正副総裁3人、審議委員6人)はリフレ派(金融緩和、財政拡大派)1人となり、正副総裁を含め、金融正常化を考える委員が多数派となります。ただし、日銀が500兆円もの国債を保有し、国債発行残高がGDP比で250%以上という財政金融状態を正常化するには、「途方もない年数がかかる」が常識になっています。
2014年当時の審議委員だった木内登英氏は「異次元緩和から折り返す最後のチャンスだった。金融拡大は誤りだった」(日経1月30日)と指摘しています。白井さゆり氏は「2年で物価上昇率2%をという目標はどう考えても無理な情勢になっていた。ただし、新たなアクションをとらなければ、日銀が約束をほごにしたと思われる。だから追加緩和に賛成した」(同)と、苦し紛れの弁明をしています。
白井氏あたりが追加反対をしていれば、日本の金融財政がこんなにひどい状態にならずに済んだのです。今頃になって白井氏に「副作用の大きさからすると、出口がいかに困難かを示唆している」と言われても無責任です。せめて「政治的な勢いに負け、私の判断は間違っていた」というべきでしょう。
黒田総裁は「好転している期待形成モメンタム(勢い)を維持すべきだと」と発言したと、議事録にはあります。黒田氏は自らが率いた異次元金融緩和を今、どう考えているか証言すべきです。黒田氏から発言がほとんど聞かれないと思っていましたら、読売新聞の連載「円転変/プラザ合意40年」という連載の第2回(1月7日)に登場しているのを見つけました。