トランプ米大統領は1日、カナダ、メキシコに25%、中国に10%のそれぞれ関税を導入すると発表した。一方、カナダのトルドー首相とメキシコのシェインバウム大統領は同日、米国の関税引き上げに対し、対抗措置を実施する方針を明らかにした。カナダは米国の輸入品に、25%の報復関税をかける。中国商務省は2日、トランプ米政権による対中追加関税を巡り、世界貿易機関(WTO)に提訴すると表明した。トランプ大統領の関税政策はいよいよ貿易戦争の様相を深めてきた。カナダやメキシコ、中国だけではない。欧州諸国でもトランプ政権の関税政策を警戒し、その行方を注意深く見守っているところだ。
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貿易戦争の渦中にあるカナダのトルドー首相とトランプ大統領、2024年11月06日、トルドー首相Xより
トランプ大統領は先月20日の就任演説の中で、第25代米大先領ウィリアム・マッキンリー(任期1897~1901年)を「偉大な大統領」と呼び、「マッキンリー元大統領は、関税と才能を通じて米国を非常に豊かにした。彼は生まれながらのビジネスマンで、彼がもたらした資金によりテディ・ルーズベルト元大統領は多くの偉業を成し遂げることができた」と述べている。トランプ氏はマッキンリー元大統領の中に自身の未来像を描いているのかもしれない。
興味深い点は、トランプ氏の最側近の一人、トランプ氏の関税政策を主導する立場にあるハワード・ラトニック氏はトランプ氏の口癖である「米国を再び偉大な国に」というメッセージについて、「アメリカはいつ最も偉大だったか」と問いかけ、「それは1900年のことだ。125年前には所得税はなく、あったのは関税だけだった。しかし、その後の世代の政治家たちは、増税と関税の減少を許し、世界が私たちの昼食を奪う状況を作り出した」と述べている。トランプ氏もラトニック氏も国を豊かにするためには関税が重要だという強い信念があるわけだ。
一国の指導者が自国の外交、経済政策を国益重視で進めていくのは当然だ。欧州連合(EU)から異端者として批判されているハンガリーのオルバン首相は「自分はハンガリーの首相だ。国民経済のためならばロシアから安価な天然ガス、原油を得るために腐心するのは当り前だ」と語ったことがあった。米国の第47代大統領に就任したトランプ氏が‘アメリカン・ファースト‘を宣言し、自国の経済に有利になるように関税政策を実施することにどの国も批判はできない。