降伏応力とは、流れ始めるまでに必要な最小限の力のことで、ペットボトルのケチャップを出すときにギュッと押さないと動かないのと同じ理屈です。

猫の場合も、じっとしているときは“固体”のように見えますが、ある程度くつろいでからだを預けると、箱や容器に合わせて“流れ込む”ようになります。

また、猫の柔らかい被毛が容器の形状を覆うため、視覚的には液体が容器に沿って広がるように見えるという印象も生まれます。

また生物学的には、猫の鎖骨は浮動鎖骨と言われ、人間のように鎖骨が肩甲骨と連結しておらず、肩幅に拘束されにくい構造になっているため、狭い隙間でも頭さえ通れば体もすり抜けられるという進化的背景があります。

他にも、猫の脊椎や四肢の関節は通常の哺乳類よりも可動域が広いため、体を大きくねじったり曲げたりすることが可能です。

加えて猫は捕食時の瞬発力やジャンプ力を必要とするため、筋肉が柔軟で伸び縮みしやすいという特性も持っています。

これらの要素により、猫は哺乳類としてしっかりとした骨格を維持しながらも、流体的な柔軟性を失わずにいることが可能となっています。

(※より流体的な特性という意味ではタコやナメクジのほうが強くなっていますが、猫は骨格がある哺乳類のなかでは流体性が強いと言えます)

また視覚的な要素も「猫が液体」に見える重要な要素となっています。

容器に入っている猫を上や横から見ると、身体の輪郭が容器の形状と重なり合って見えにくくなるため、まるで猫が“とろけて”容器の形に流れ込んでいるかのように感じます。

猫の毛並みがふわっとしていることも、境界をはっきり認識させづらくします。被毛が体の正確なラインを隠してしまうため、ますます“流動感”が増して見えるのです。

結局、猫は液体なのか?

「結局、猫は液体なのか?」主張の根拠をわかりやすく解説
「結局、猫は液体なのか?」主張の根拠をわかりやすく解説 / Credit:clip studio . 川勝康弘

これまで見てきた通り、猫が「液体」と称されるのは単なる可愛らしいジョークではなく、物質の状態が固定的なものではなく、観察する時間や状況によって大きく変わるという科学的事実に基づいた主張になります。