コウモリは哺乳類の中で唯一「飛ぶ能力」を獲得したユニークな生物です。

ムササビやモモンガは木から木へ滑空できるだけであって、コウモリのような長距離の自力飛行はできません。

約6000種いる哺乳類の中で自力飛行できるのはコウモリのみ。

それだけでもいかにコウモリが特殊な存在かがわかりますが、さらに興味深いのが「逆さまにぶら下がって眠る習性」でしょう。

彼らは頭を下に向けた状態で眠るのですが、なぜそんないかにもシンドそうな姿勢を選んだのでしょう?

頭に血は上らないのでしょうか?

こうした謎の秘密は、コウモリが辿ってきた進化的な道のりに隠されているのです。

 

目次

  • なぜ「ぶら下がり」を進化させたのか?
  • 頭に血は上らないの?逆さまにならないコウモリの例も

なぜ「ぶら下がり」を進化させたのか?

コウモリは飛んでいないとき、洞窟の天井や木々、橋の裏側などにぶら下がっていることがほとんど。

睡眠時もその状態で眠りにつきます。

なぜこのような姿勢をとるようになったのでしょうか?

「その理由はコウモリが飛行能力を獲得する過程に由来している」と米イリノイ州コウモリ保護プログラム(Illinois Bat Conservation Program)の生物学者であるタラ・ホホフ氏(Tara Hohoff)は指摘します。

コウモリは私たちと同じ哺乳類であり、今から約5000万年前に進化しました。

「コウモリは地上を歩く哺乳類から飛行する哺乳類へと進化する過程で、ムササビのように滑空することから始めました」とホホフ氏はいいます。

現代のコウモリの祖先は地上から高い木に登り、木と木の間の短い距離を滑空して移動し始めたのです。

この過程でまず、垂直な木を登るための強い四肢が進化しました。そして滑空を繰り返すうちに腕が翼へと進化し、長距離を自力飛行できる唯一の哺乳類となります。

画像
Credit: canva