ミカンハダニは、これまで知られているダニのうちで、アスタキサンチンの量がかなり多い種でしたが、カベアナタカラダニはそれを遥かに上回る127倍もの量を持っていました。

これは既知の甲殻類を含む微小節足動物の中でも最も高いレベルだという。

ロブスターなどが赤い原因にも関連するカロテノイドをそれだけ大量に持つからこそ、カベアナタカラダニは頭からつま先まで全身が真っ赤だったのです。

ド派手な赤色は日光から体を守るためだった
ド派手な赤色は日光から体を守るためだった / Credit: canva

さらに彼らの有するカロテノイドは餌となる花粉から合成されており、高い抗酸化活性を持っていることが分かりました。

よってド派手な赤い色素は、太陽の紫外線やコンクリート壁の強い輻射に対して、カベアナタカラダニの生存を大いに助けていると考えられます。

ところで、赤色に生存のためのメリットがあることは分かりましたが、それは同時に重大なデメリットを生んでいるのではないでしょうか?

ずばり、派手さのせいで捕食者に見つかりやすくなることです。

しかし研究者によると、その点は何の心配もないとのこと。

というのも彼らの天敵であるアリやカメムシは、赤色に対する視細胞を持っていないため、赤色が識別できないのです。

なので、私たちにとってはコンクリートの上で異様に目立つ彼らの赤色も、捕食者の狩猟行動に影響は与えていないと考えられます。

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参考文献

春先、コンクリート壁でみかける派手な赤いダニは、なぜ赤い?~法政大学と京都大学の研究グループが真っ赤な体色の原因を解明~
https://www.hosei.ac.jp/press/info/article-20221221161004/

元論文

The flashy red color of the red velvet mite Balaustium murorum (Prostigmata: Erythraeidae) is caused by high abundance of the keto-carotenoids, astaxanthin and 3-hydroxyechinenone
https://link.springer.com/article/10.1007/s10493-022-00766-z