ここまでで、カニの身とその美味しさの秘密について考えてきましたが、カニ好きには見過ごせない別の部位があります。

それは、カニの甲羅に隠された少量の「カニミソ」です。

カニミソには独特の風味と濃厚な味わいがあり、「手間をかけても食べたい」という人が少なくありません。

しかし、カニミソがどんな食べ物なのか誤解している人もいます。

その名称から「脳みそ」だと思っているかもしれませんが、実は全く違います。

では、カニミソの正体はいったい何なのでしょうか。

カニミソの正体は?味噌でも脳みそでもない!

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カニミソの正体は? / Credit:Canva

カニの甲羅を取り除くと見られる茶色から濃緑色のペースト「カニミソ」の正体は何でしょうか。

「カニミソ」という名前ですが、当然、味噌でも、脳みそでもありません。

カニミソは、カニの中腸腺(ちゅうちょうせん)と呼ばれる器官です。

中腸線は、エビやカニなどの節足動物の消化腺です。

ここは、脊椎動物の「肝臓」に相当する栄養摂取に関わる生理機能と、「膵臓」に相当する消化酵素を分泌する機能を有しています。

そのため、中腸線は「肝膵臓」とも呼ばれていました。

私たちは、カニの肝臓や膵臓のような部位を、カニミソと称して食べていたのです。

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カニミソの軍艦巻き。「カニの肝臓と膵臓に当たる部位の軍艦巻き」ということ / Credit:Wikipedia Commons

ちなみに、私たちは、カニ以外にも中腸腺を食べることがあります。

例えば、イカの塩辛にはイカの内臓が使用されますが、これは主に中腸腺のことです。

イカの塩辛特有の味わいは、この中腸線や発酵・熟成過程が関係しているのです。

また「肝臓を食べる」という習慣自体も一般的であり、アンコウの肝臓である「あんきも」、ガチョウやアヒルの肝臓である「フォアグラ」などが有名です。

とちらも、なめらかで濃厚な味わいが特徴の珍味ですが、「カニミソ」を食べることもこれらに近い食習慣なのかもしれません。