(3) 本社と現地法人の対立 本社が主導してグローバル標準のシステムを導入する際には、本社はシステムを使ってガバナンスを利かせようとします。ただしそのガバナンスは現地法人にとっては業務効率の妨げになる場合が多く「現地の業務に合わない」と反発するケースが見られます。特に売上高や利益の大きな現地法人は発言力が強いことが多く、本社が主導してデザインしたシステムの導入を拒否するといった事例も散見されます。
(4) 現場とIT部門の対立 ITプロジェクトは予算・スケジュール・品質の3つのバランスを取りながら推進することとなります。IT部門は予算・スケジュールに責任を持ち、現場は構築する業務の品質に責任を持つ、という場合、お互いの利害が一致しないことがあります。
組織横断が要因となって、プロジェクトの難易度がアップするこうした対立構造に加え、各部門の考え方やプロジェクト参加に対するモチベーション、全社最適の観点から見た場合に発生する問題点もあります。以下では組織横断に着目した問題点を3つ挙げることにします。
(1)自部門の利益を優先 各部門が自部門の利益を優先するため、全ての部門の意見を聞きいれているとプロジェクト全体の目的が曖昧になります。プロジェクトの目的が曖昧で、具体的な成果がイメージできないと何をどこまでシステムで実現するかの決定が難しくなります。
たとえば、「業務全般を効率化する」という抽象的な目的だけを掲げたプロジェクトでは、関係者によって目指すべきゴールが違ってしまうため、必要以上にシステムへの要求事項も肥大化する、という傾向があります。
(2)部門によって異なる危機感や温度感 各部門によって業務の課題に対する危機感や温度感が異なることは良くあることです。このためプロジェクトの体制に入っているメンバーでも、プロジェクトの検討に対して自分ごとでなく他人ごとになってしまい、評論家のようなスタンスで関与する結果、決めるべきことを決められない、という状況に陥ります。