我が国における氏の制度の変遷(法務省)

二つ目が家族一体化論である。たとえば、第174国会(2010年)参議院に提出された「選択的夫婦別姓制度の法制化反対に関する請願」は、夫婦同姓が「より絆の深い一体感ある夫婦関係、家族関係を築くことのできる制度」だ主張する。

しかし、一体感は時間と空間、そして何よりも体験の共有によって培われるものだ。同じ苗字を名乗れば済むような簡単な話ではないうえ、一体感云々は夫婦や家族内のプライベートな問題であって国家に指導されるような事柄ではない。

そもそも別姓が離婚を助長したり、家族の不仲や不和の原因になったりする証拠はなく、それは理性的判断力があれば容易に理解できることなので、一体化論は下火になった感がある。代わって、今反対派が力説するのが、高市・小林氏のように「生まれてくる子どもが被る不利益」である。

1996年の法制審議会の答申は、別姓の場合子どもの姓は結婚時に予め決め、子どもはすべて同姓にすること、また出生後の子どもの姓の変更には家庭裁判所の許可を要するとの方針を示した(法務省)。

一方、立憲民主党が提出している案では、結婚時ではなく子どもの出生時に父母の協議で決め、姓の変更も家裁許可を原則としつつも、場合によっては届出のみでも可能としている(立憲民主党)。

高市氏は「夫婦双方の実家が子の氏を決める協議に介入し」「親族間に争い生じる」可能性を指摘する一方、立憲民主党案には「父母の協議が調わない」場合、家裁が「子の氏を定める」とする点について、その判断基準に疑問を呈した(産経新聞2025年1月7日)。