これを解決するには保険料の納付を65歳まで延長し、支給開始年齢を平均寿命の85歳にすればいいが、それはとても政治的な合意が得られない。また無年金の生活保護の問題は解決できない。

このような矛盾が次々に出てくるのは、超高齢化社会で賦課方式の年金制度を100年後まで続けようとしているからだ。これは人口増加を前提とした年金ネズミ講であり、人口が減少すると破綻することは目に見えている。

代替案としては、基礎年金を消費税に置き換える最低保障年金が民主党政権で提案されたが、年金官僚が葬った。彼らの最大の利権である年金を財務省に渡したくないからだ。これを今も主張しているのは、河野太郎氏だけである。

最大の問題は厚生年金の2階部分をどうするかだ。民主党政権では積立方式が検討されたが、これは「二重の負担」などの難点があり、政治的に不可能だ。民間の参入を認めるしかない。

今でも大企業のサラリーマンは厚生年金とiDeCoの2本立てで積み立てているので、厚生年金を任意加入にすればいいのだが、そうすると「払い損」になる45歳以下や年収500万円以上は厚生年金から脱退し、年金財政が破綻する。それを避けるために、こんな複雑な制度をつくっているのだ。

だが年金制度を破綻させないために、現役世代の生活を破綻させるのは本末転倒である。そもそも公的年金は必要なのか。「国民皆保険」は維持すべきなのか。現役世代と将来世代のために持続可能な制度を再構築する改革が、今国会では問われている。