あくまでも「選挙で示された国民の信託を受けて」という措置である。日本側の一部の識者などが「トランプ大統領と同じ意見の人間だけが官僚機構を動かすのは独裁だ」などと批判するのはまったくの見当ちがいなのだ。二大政党制の本質をわかっていない反応だともいえる。
トランプ新政権の女性登用の紹介を続けよう。
選挙期間中からトランプ陣営に直結してきたワシントンの大手シンクタンク「アメリカ第一政策研究所(AFPI)」の理事長リンダ・マクマホン氏(76)の教育長官任命も注目された。この女性は年来の保守派として教育には連邦政府の管理は不要だとして教育省自体の廃止を唱えてきた人物である。
マクマホン氏は一期目のトランプ政権では中小企業庁の女性長官だった。「教育は民間の両親の手に」との主張はこれまたリベラル派への過激な挑戦である。
AFPIからは多数の人材が新政権に登用された。所長のブルック・ロリンズ氏(52)は農務長官に任命された。ロリンズ氏も第一期トランプ政権では女性の大統領補佐官として活動した保守派の弁護士である。
司法長官に任命された同じ女性弁護士のパム・ボンディ氏もAFPIの法務部長だった。同氏はフロリダ州初の女性司法長官を8年間務め、トランプ氏への4件の刑事訴追事件でも弁護団の中枢にあった。これらの訴追に対して「民主党陣営の法執行機関を政敵迫害に使う武器化だ」と非難してきた。
トランプ氏自身もボンディ氏任命について「彼女は司法省の武器化を正すだろう」と言明した。司法分野での民主党への激しい反撃が予想される。
なお以上のような閣僚級の人事は議会上院の承認が必要となる。民主党側は当然、その承認の公聴会で反対や批判をぶつける。だが上院はいま与党の共和党が多数を占めており、波乱はあってもまずはトランプ大統領の意向通りに承認されるだろう。
近年まで民主党の女性下院議員だったトゥルシ・ギャバード氏(43)の国家情報長官への任命も異色である。リベラル色の強いハワイ州選出の政治家だが、元軍人でイラクでの軍務歴もある。その結果か、安全保障政策では「力による平和」を唱え、バイデン政権の安保政策を「軟弱すぎる」と非難してきた。