コンゴ民主共和国の長年にわたる騒乱は、実際の武力紛争の現状及び歴史としてルワンダとつながっているが、政治的・外交的「論理」としても、ルワンダのジェノサイドとつながっているのが、大きな特徴の一つである。

ルワンダの軍事介入については、コンゴ領内の天然資源が目的だ、と総括する方々が多い。ルワンダの経済成長を支えている要素の一つが、コンゴから収奪している天然資源だと指摘する者もいる。実際に、国連の報告書類で、ルワンダがコンゴ領内の天然資源を収奪していることが、豊富な資料とともに、何度も語られてきている。これらの指摘は、相当程度に正しいはずである。

広島に投下された原爆の製造に使われたウランがコンゴ産であったことは有名だが、それ以降も、独立時のコンゴ動乱から現在に至るまで、コンゴ東部地域の豊富な天然資源が、事態を複雑化させていることは間違いない。

だが結果として天然資源を収奪していることをもって、軍事介入の唯一の目的は天然資源の収奪だ、と断言できるかは、疑問である。ルワンダに、安全保障上の考慮があること自体は、必ずしも嘘ではないだろう。

もちろん過剰な対応をとっている疑いが強いことも指摘すべきである。ただ、カガメ大統領は、コンゴ領内でツチ系の人々が迫害されていることが、「M23」の行動の背景にある、という主張を、EAC(東アフリカ共同体)の会議などで、悪びれることなく声高に繰り返している。

国際社会は、一致団結しているようにも見えるが、実際にはフランスが主導する国連PKOは撤退寸前の状態であり、準地域機構のSADCもコンゴ民主共和国にこれ以上の介入をする準備はない。

ルワンダの背景にアメリカなどの大国が存在している、とみる首都キンシャササの人々が、各国大使館を襲う事件も起こってきているが、襲われているのは、アメリカ、ウガンダ、ケニアと、(この地域で伝統的には影響力を持ってきたフランス以外には)英語圏諸国である。民衆の間に、こうした英語圏諸国の「陰謀論」が浸透していることが、うかがえる。