コンゴ民主共和国では、ルワンダを構成する民族集団であるツチとフツの系統の人々が存在している。ルワンダは、繰り返し、ツチ系の人々が迫害されていると主張し、反政府勢力を支援して介入する理由としてきた。

そのようなルワンダが支援する集団の代表が、「M23」である。現在、コンゴ民主共和国東部で政府軍や国連PKO部隊やSADC部隊を蹴散らして進軍している「M23」の勢力の中には、ルワンダ軍兵士も含まれていると広範に信じられている。

カガメ大統領は、1994年のルワンダにおけるジェノサイドは、国際社会がルワンダを見捨てたために起こった、と主張してきている。そのうえでジェノサイドの公式名称を「ツチに対するジェノサイド」と定め、犠牲者がツチで、加害者がフツであったことを強調する政策をとっている。

実際にはフツ系の人々が多数殺されたし、RPFが行った戦争犯罪行為も多々指摘されているが、ルワンダ国内にいる限り「ジェノサイド」を「ツチに対するジェノサイド」と表現しないと、当局に連行される恐れにさらされることになる。

カガメ大統領は、この「国際社会が見捨てた」という物語を、ありとあらゆる場面で強調し、ルワンダに対する国際支援の確保などにも努めてきた。アメリカのビル・クリントン大統領は、ルワンダを公式訪問した際に、安全保障理事会においてジェノサイドの認定を怠った自国の外交に問題があったことを認めて、謝罪の意を表明したことがある。そしてカガメのルワンダと、アメリカは、蜜月関係を維持してきている。

アメリカにとって、カガメ政権下でフランス語圏諸国から脱皮して英語圏国になったかのようなルワンダは、アフリカにおける貴重なパートナーとしての性格を持つ国である。今回の騒乱にあたっても、アメリカのルビオ国務長官は、いち早くカガメ大統領と電話会談を行っている。

このカガメ大統領が用いる外交姿勢は、イスラエルがいまだに「ホロコースト」の歴史を持ち出し、敵対勢力を十把一絡げに「反ユダヤ勢力」と呼び、それを通じてアメリカを常に味方につけようする姿勢と、相通じるものがある。