「#日枝久出てこい」というハッシュタグがずっと流行っているけど、グループのトップのクビを取ったら問題が解決するというのは、典型的なツリー型の発想だ。上意下達の伝達系統で起こされた不祥事なら、文字どおり「頭を切り落とせば」、四肢の動きも止まる。

しかし、現時点でも「院政」のように企業を統治している(らしい)人から、肩書を取り上げても、より深く「奥の院」に籠って同じことが続くだろう。不祥事が起きた後、誰に聞いても「私は “命令” は出してません」としか答えない――それが必ずしも ”嘘” でもないリゾーム状の組織の機能不全を止めるには、遥かに知恵と勇気を要する。

もう一度確認するけど、こうしたことが指摘されたのは1980年代、バブルの空気の下でフジテレビがぐんぐん視聴率を伸ばしていた頃だ。

当時から、どこに問題があるのかを、知的に考える人は知っていた。だけど今日に至るまで、どうすれば解決できるのかが、誰にもわからない。

今回もフジテレビを叩く側であれ、守ろうとする側であれ、ホンモノの問題に踏み込まないニセモノの解決策が手っとり早く採用されて、結局なにも変えないのではと憂えざるを得ない。すべてが楽しく、知的にキラキラして見えた80年代の終わらせ方を、私たちはいまも手にしていないのだ。

(ヘッダー写真は2001年、特番で往時を懐かしむとんねるずとスタッフ陣。右から2人目が辞任する港社長。サンスポより)

編集部より:この記事は與那覇潤氏のnote 2025年1月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は與那覇潤氏のnoteをご覧ください。