ツリー(樹木)とは上下の階層や、部局どうしがどこで接点を持つかが明確な組織のイメージを指す。近代的な官僚制とか、上意下達の軍隊の指揮系統は、ツリーの典型だ。
対してリゾーム(根茎)とは、あらゆる要素が絡まりあうように互いにつながっており、結果として系統も境界も不明で、内部と外部すら区別できない関係性の束を指す。こっちの方が「なんでもアリ」で楽しいじゃん的なノリで、「都市の本質はツリーではなく、リゾームにある」みたいに書くのが、あの頃の知的なファッションだった。

左がツリーで、右がリゾーム。 こちらのブログからお借りしました
だけどホントの世の中は、そこまで単純じゃない。殊に日本社会の面倒な点は、タテマエとしては「ツリー状の(=近代的な)命令系統」で動くことになっている組織が、実際には個々の現場を取り巻く「リゾームなつながり」、不定形の空気やノリで運営されて、乖離が著しいことにある。
2017年に米国で #MeToo 運動を招いた映画プロデューサーのように、もし個別の有力者(たとえば中居氏)が「命令だからやれ」として、不当な性的搾取を強要したのなら、ツリー型のハラスメントだから、採るべき対応は明瞭だ。そうした人を特定し、倫理違反に問うて、クビにすればいい。
ところが実際に起きたことは、おそらくそうではなかった。
フジの編成幹部が中居氏の(品の悪そうな)接待に「他局の女子アナ」まで動員していたとする報道が話題だが、あたりまえだが他の会社の社員に「業務命令」は出せない。この業界はこういうトコだから、みたいなリゾーム状の空気で、職務ですらないものを断りにくくさせる、そうしたやり方だと責任も不分明になり、なくすのが難しい。