かつては会社を退職したら、定年後の生活がスタートしてわずかばかりの余生の程なく先にあの世が待っていた。

サザエさんの漫画が連載されていた時代、波平は54歳という設定で男性の平均寿命は60歳前後、女性は65歳だった。今では54歳でも若さを感じさせる人は少なくないが、当時の波平は正真正銘「おじいちゃん」であり、高齢のお年寄りだったのだ。

しかし、今は違う。平均寿命は伸びに伸び続け、見た目も肉体も昔と比べて年齢は若い人が大勢いる。頭はしっかりと動き、体もよく動く。定年後でも働き続ける人は非常に多い。

2023年の総務省の「労働力調査」によると、60~64歳の就業率は74%、65~69歳では52%。半数以上の人が定年後も働き続けるのだ。

「60歳、65歳で定年を迎え、一生働かない」というのはもう昔の話で、これからはさらに働き続ける人が増える。

「本当は働きたくないが生きていくために仕方がなく」という人もいるだろうが、「社会とのつながりを失いたくない」「ボケ防止のために」「仕事が好き」という理由から、主体的に働き続けることを選択する人も少なくない。

筆者もその一人であり、できれば死ぬまで働きたいと思っている。理由はシンプルで、今どき60歳くらいで仕事をやめてしまえば、その後の数十年という老後を楽しく過ごせる自信がないからだ。

現在は寿命の伸び過ぎで老後に何もしないのでは、あまりにも人生は長過ぎる。周囲に定年退職後、怒りっぽくなってお店の店員さんに怒りをぶつけるようになった人や、社会性がなくなって頭の衰えを実感するという人をそれなりに見てきたので、余計にそう思うのだ。

しかも仕事は一度やめたら復帰が難しい。細くてもいいから、働き続けて習慣化してしまうのが望ましい。

働き続ければ過剰な資産形成も不要

そして働き続ければ、老後の食い扶持は確保できてしまう。それを考えると、若い時期にできたであろう経験を犠牲にしてまで、過剰な蓄財を励む行為は間違っているように自分には見える。