リンクで倒れたボクサーに対し、レフリーは2人のボクサーの間に入ってレフリーストップをする。戦闘意欲を失ったボクサーに対し、これでもか、これでもかと戦い続ければ、レフリーだけではなく、観客もブーフィングし、戦いを止めるように促す。

トランプ米大統領の就任を祝福するイスラエルのネタニヤフ首相、イスラエル首相府公式サイトから、2025年01月20日

イスラエルとパレスチナ自治区を実効支配してきたイスラム教過激テロ組織「ハマス」との戦いは2人のボクサーの試合のように、勝敗は既に明らかだ。ハマスは指導者を失い、多くの犠牲者を出している。そのガザ紛争を審判してきたレフリーは勝利者のイスラエルの手を取って、「貴方が勝った」と伝えるが、イスラエルは戦いをストップせず、戦い続ける。

イスラエル軍と「ハマス」の戦闘を審判してきたレフリーもリング下の傍観者も負傷するハマスメンバーやそのシンパ、戦場の犠牲者のパレスチナ人に同情し、戦いを続けるイスラエルへの批判を強める。一方、イスラエル側は国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動を今月末までに停止するように関係の国連側に通達する。救援物資が途絶えれば、パレスチナ側の被害は更に増えることが予想され、国連を含む救援組織、中東諸国はイスラエルの対応を非人道的として批判のトーンを高める。

以上、2023年10月7日のハマスの「奇襲テロ」後のイスラエルとハマスとの状況だ。イスラエル側に同情してきた国際社会も既にパレスチナ側にその同情先を移動し、被害者だったイスラエルは久しく加害者として糾弾されてきた。国際刑事裁判所(ICC、本部ハーグ)は昨年11月21日、「ハマスを完全に壊滅するまで戦い続ける」と豪語したイスラエルのネタニヤフ首相とガラント前国防相に対して戦争犯罪者として逮捕状を発布した。被害者と加害者の関係は見事までに逆転してしまった。ウクライナを軍事侵攻したロシアのプーチン大統領が同じように戦争犯罪者として逮捕状が発布されているが、ネタニヤス首相はそのプーチン氏と同列視されてしまった。フランスのマクロン大統領はイスラエルへの武器輸出を停止すべきだと言い出した、といった具合いだ。