政府、日銀の腹のうちを探ってみたくなります。インフレだと名目GDP(国民総生産)が膨張し、税収は増える。物価が上がれば、モノ、サービスにかかる消費税収が増える。名目の売上が増えれば、企業の利益も増え、法人税収も増える。税率を変えなくても、税収が増える。いわゆるインフレ税です。目標の2%を超えるインフレ状態はすでに3年になり、今後も2年は続くでしょう。
政府の懐には、インフレ税収が転がりこんできます。政府は腹のうちでは「税制改革による増税をすると選挙に負ける。税率を買えないで済むインフレ税は歓迎できる」と思っているのに違いない。今の状態が心地よいのです。政府の懐は潤い、国民の懐は物価高で痛む。そういう本音を政府、日銀は言わない。
個人金融資産は2212兆円(24年6月)に増えています。その半分が現預金です。高齢世代ほど多く所有し、60代以上が6割に当たる1400兆円を持っています。多くの金融資産を持った高齢者が払う消費税は増えても構わないどころか、もっと負担させるべきです。消費税率(現在10%)を当面、15%程度まで上げたほうがいい。説明を尽くせば、国民が納得できる理屈があるのに、政府は動かない。
働く若い勤労世代は賃上げがあるので、消費税が上がってもかなりの部分をカバーできる。生活が苦しくなる低所得層には現金給付で救済する。資産がある高齢者が払う税金を増やすには、消費税率を引き上げるにはよいということになります。軽減税率もなくしたほうがいい。軽減税率で最も得をしているのは、消費が旺盛な高齢者です。
「実はこうなっている。だからこうしたい」といって、首相は実行したらいい。「財政再建には取り組んでいく」という石破首相は、施政方針演説で財政健全化について触れたのは、たった15行程度です。「経済あっての財政の考え方の下、成長率の引き上げに重点を置く」、「基礎的財政収支の黒字化を目指す」など、机上の空論に近いことを語っただけで、本気で財政健全化に取り組むつもりはない。野党にもその気はない。