欧州の代表的カトリック教国ポーランドで宗教授業削減問題が飛び出したのは決して偶然でも、突発的な決定でもないこと明らかだ、愛国主義的な右派与党「法と正義」(PiS)が政権を統治していた時、政府と教会は密接な関係を維持してきたが、前回の議会選挙(2023年10月15日)で野党第1党の中道リベラル政党「市民プラットフォーム」(PO)主導の野党連合が過半数を獲得し、8年間続いたPiS政権に代わって新政権が発足されて以来、政府と教会の関係は依然のような緊密なものでなくなった。
ポーランドは久しく“欧州のカトリック主義の牙城”とみなされ、同国出身のヨハネ・パウロ2世(在位1978年10月~2005年4月)の名誉を傷つけたり、批判や中傷をすることは最大のタブーだった。同国の国家統計局のデータによれば、国民のほぼ90%はカトリック信者だ。そのカトリック教国のポーランドでカトリック教会への信頼が急速に低下している。
同国の政治学者アントニ・デュデク氏は、「教会の危機は今始まったものではなく、長い年月をかけて深刻化してきた。原因として、①旧共産党政権との癒着、②聖職者の未成年者への性的虐待と聖職者の贅沢な生活スタイル、③聖職者とPiSの結びつきなどが挙げられる」と述べている(バチカンニュース2020年11月4日)。
ポーランド教会では聖職者の性犯罪があったという報告はこれまで1度も正式には公表されなかった。聖職者の性犯罪が生じなかったのではなく、教会側がその事実を隠蔽してきたからだ。沈黙の壁を破ったのは聖職者の性犯罪を描いた映画「聖職者」(Kler)だ。同国の著名な映画監督ヴォイチェフ・スマジョフスキ氏の最新映画だ。小児性愛(ペドフィリア)の神父が侵す性犯罪を描いた映画は2018年9月に上演されて以来、500万人以上を動員した大ヒットとなった。国内で教会の聖職者の性犯罪隠ぺいに批判の声が高まっていった。