こうしたトレーニングにより、通常の練習では得られない速さと動きが脳と神経系に新たな刺激を与えるはずです。
そして結果は驚くべきものでした。
トレーニングの後、右手の指の動きが明らかに速くなったのです。
例えば、複雑な指の動きが必要とされるケースでは、打鍵間隔(2つのキーを連続して押したときの時間間隔)が平均で約27ミリ秒短縮(約6%向上)しました。
更に、グローブを装着していない左手においても上達効果が見られました。
研究者たちは、この結果について、右手への受動的なトレーニングが脳全体に影響を与え、左手の神経回路にもポジティブな変化をもたらしたからだと考えています。
加えて、トレーニング効果は単なる速さの向上にとどまらず、正確性の大幅に改善にも寄与しました。
このことから、外骨格によるトレーニングは、通常の練習では発達しない領域を刺激し、結果として「限界を超える」パフォーマンスを引き出せると分かります。
今回の研究は、熟練したピアニストたちが、外骨格グローブによって、自分の限界を超えることができることを示唆しています。
そしてこの技術は、指先の精密な動きが求められる外科手術や工芸、さらにはリハビリテーションやゲーム産業など、幅広い分野での応用が期待されています。
外骨格技術は、これまでのように、単に「人間の能力を補う」だけでなく、「人間の能力を拡張する」ことも可能かもしれないのです。
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参考文献
Robotic hand helps pianists overcome “ceiling effect”
https://arstechnica.com/science/2025/01/robotic-hand-helps-pianists-overcome-ceiling-effect/