バイデン米大統領は20日、退任直前にトランプ現大統領の政敵と見られる人物に対して予防的恩赦を与えた。恩赦を受けた人物は、免疫学者アンソニー・ファウチ博士、トランプ氏の元統合参謀本部議長マーク・ミリー氏のほか、議会襲撃事件の調査委員会の全メンバーが含まれていた(その中には、リズ・チェイニー元下院議員やアダム・シフ元下院議員が入っている)。
調査委員会は、米議会議事堂が襲撃された事件の背景や責任者の役割を調査するために設置されもので、トランプ氏の事件との関与などが調査された。
バイデン氏は予防的恩赦を実施した理由について、「私たちの国家は、献身的で利他的な公務員に日々依存している。彼らこそが民主主義の生命線だ。彼らがその職務を誠実に果たすことで、常に脅迫や威嚇にさらされるのは憂慮すべきことだ。ただし、これらの恩赦が、不正行為の承認や罪を認めるものとして誤解されるべきではない」と強調している。
米大統領には、連邦法で有罪判決を受けた者の刑を短縮したり、完全に恩赦する権限があり、任期終了間際にこの権限を行使する例はよくあるが、将来の可能性のある連邦レベルでの起訴を未然に防ぐための予防的恩赦は異例だ。過去にはウォーターゲート事件に関連して辞任したリチャード・ニクソン氏に対し、後任のジェラルド・フォード大統領が与えた「全面的で自由かつ無条件の恩赦」があるという。
米大統領が自身の権限で恩赦(予防的恩赦を含む)を行うことに反対するつもりはないが、バイデン氏が退任直前に予防的恩赦した人物の中にアンソニー・ファウチ氏の名前を見つけた時、残念ながら反対せざるを得ないのだ。ファウチ博士は2年前、米国大統領の医療主任顧問および国立感染症研究所の所長を退任した。それ以前、彼はアメリカにおける新型コロナウイルスとの闘いの中心人物として著名な科学者だ。彼は、国立感染症研究所を約40年間率い、合計7人の米国大統領の下で働いてきた。