買収に関心を示すのは、イオンやトライアル、ドン・キホーテといった小売事業者と、投資ファンドである。顧客に受け入れられやすいのは、トライアル(株式会社トライアルホールディングス 以下トライアル)だ。
トライアルは、24年3月に東京証券取引所グロース市場へ上場したばかりの急成長企業である。先の「顧客満足度調査」では3位。「日本のウォルマートになりたい」との思いで創業された同社は、徹底したDX化により、非常に安価な商品を提供している。
例えば、「食パン トライアルブレッド(1斤)」が99円、「ロースかつ重弁当」が299円、「冷凍讃岐うどん(200グラム×5食)」が199円など(※)。ウォルマート時代を知る西友顧客とは、高い親和性が期待できる。
※ 価格は全て税込み。 地域により変動する場合がある。
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トライアルホールディングスプレスリリースより
一方、投資ファンドによる買収は、良い結果を期待できない。
8か月前、大久保社長は以下のように述べていた。
「規模拡大に向け、M&Aを積極的に進めていく。ファンドも『ぜひやりましょう』と言ってくれている」
その舌の根の乾かぬ内に、西友は「M&Aされる側」となった。先の北海道・九州の店舗売却もファンドの意向が強いと言われる。
投資ファンドの最終目的は、「会社を売って利益を得ること」だ。一方、小売事業者の目的は、「顧客に商品を売って利益を得ること」である。短期的な利益を追求する投資ファンドと、長期的な視点で経営を行う事業者では、齟齬(そご)が生じ、ちぐはぐな経営になりがちだ。西友では、利益率は改善したものの、低い顧客満足度という副作用も生じている。
イオンでもトライアルでもドン・キホーテでもいい。小売事業者に、地に足がついた経営をしていただきたい。
劇的な風がやんだ後「劇的な風だ。」(小池一子)
1981年の西友小手指店オープン時のキャッチコピーである。新しい風を起こすという発想を盛り込んだものだという。