それでも翌2012年、プリンスリーグ東北1部で20得点を挙げ得点王を獲得し、チームを初優勝に導いた金子。2013年6月には清水エスパルスに特別指定選手として登録され、2014年に正式に入団する。

しかしながら清水入団当時は、FW大前元紀(現南葛SC)、FW高木俊幸(所属未定)、FW長沢駿(現京都サンガ)、FWノヴァコヴィッチ(2017年引退)、MF石毛秀樹(現ウェリントン・フェニックス)らの攻撃陣に割って入ることはできず、活躍の場は当時J3に参戦していたJリーグ・アンダー22選抜が中心となった。2015シーズンには当時J2の栃木SCへ育成型期限付き移籍し、実戦経験を積んだ。

2016シーズンに当時のクラブ初のJ2を戦っていた清水に復帰した金子。大前の負傷離脱によりチャンスが訪れ、鄭大世と2トップを組んで活躍する。最終節の徳島ヴォルティス戦で決勝点を奪い、清水のJ1復帰に大きく貢献。また翌2017シーズン、J1第8節の川崎フロンターレ戦で決めた得点は、J1通算20,000号となった。

その後は2列目起用も増え、その決定力のみならず、運動量と突破力を生かしたプレースタイルで、2018シーズンにはJ1リーグで10得点7アシストを記録。チームを1桁順位にまで押し上げる原動力となった。

しかし2021シーズン、ミゲル・アンヘル・ロティーナ新監督が清水に就任すると、金子は出場機会が激減。MF鈴木唯人(現ブレンビーIF)など若手の台頭もあり、同県の宿敵であるジュビロ磐田への期限付き移籍を決断する。

しかし金子の献身性と貢献度を知る清水サポーターは、これを「禁断の移籍」とは見なさず温かく送り出した。完全移籍に移行した2022シーズン以降も、IAIスタジアム日本平に磐田の一員として帰還した金子に罵声を飛ばすことはなく、愛あるブーイングと拍手で迎えた。

金子翔太(ジュビロ磐田所属時)写真:Getty Images

ドリブルの技術向上と共に失ったもの