実際に、2024年には機械的ニューラルネットワークと生物学的ニューラルネットワークを結合し、生体側が機械側の情報を解読できることを示した研究も報告されています。

脳型AIを追求していたら、いつのまにか脳とAIが情報交換できる可能性まで見えてきた、というわけです。

もしこの技術が上手く発展していけば、進行波が人間の脳とAIの間を行き来することで、脳とAIの融合を実現できるかもしれません。

そして、もし進行波が人間の意識を運ぶ媒体となるならば、人間の進行波を受け取ったAIの中に、意識のようなものが芽生える可能性もあります。

さらに進行波に着目した内部が見えるAIの開発は、将来においても重要です。

AIを医療や自動運転などの分野で導入する際、「なぜその結論に至ったのか」を説明できるかどうかが大きな懸念材料とされています。

たとえば自動車の運転アルゴリズムに誤りがあった場合、それが“設計ミス”なのか、“想定外の環境”なのか、あるいは“学習データの偏り”なのかを明確にできなければ、責任の所在も対策も曖昧になってしまいます。

しかし、波のパターンを解析すれば、ネットワークがある入力画像に対してどう反応し、どのような経路を経てその判断に至ったのかを明確に辿る手がかりを得られます。

仮に誤った認識をしたとしても、「どの波の部分が異常な振る舞いを起こしたのか」を探り、再学習や調整を行いやすくなります。

さらに、波の様子を可視化ツールとして表現すれば、専門家以外でも“ざっくりとした判断根拠”を理解できる可能性が開けるでしょう。

このように、脳をまねるAIは、脳を理解する新たなチャンネルになり得るだけでなく、人間社会におけるAIの説明責任を果たすうえでも力を発揮してくれそうです。

波を解き明かすことは、脳とAIをつなぐカギであると同時に、私たちがAIをより安心して使うための指南役にもなるのかもしれません。