最近のAIは便利で「美味しいコーヒー店はどこ?」と尋ねると、一瞬で地図とクチコミが表示され、「ここが評判ですよ」と提案してくれるものもあります。
まるでこちらの意図を先読みしているかのような、その“魔法”のような応答は、日常に溶け込みつつあるテクノロジーの象徴と言えます。
ところが、「このAIはどんな仕組みで答えを導いているのか?」と問うと、一気に雲行きがあやしくなります。
私たちは、人間の脳がどのように思考しているかを完全には理解していませんが、それと同様に、AIの内部プロセスもまたブラックボックスと呼ばれ、開発者自身でも「なぜこの結論に至ったのか」を細かく説明できないことがしばしばあるのです。
自動運転や医療診断のように、人命に関わる領域にAIを導入するとき、このブラックボックス問題は特に深刻になります。
「理由を説明できない」システムはリスク管理が難しく、社会的信頼を得にくいからです。
そんな中、カナダのウェスタン大学(Western University)の研究者たちは、「AIの内部でも、脳で観察されるような“進行波”のような波が生まれている可能性がある」という新たな発見を報告しました。
脳では“視覚野や皮質を移動する波”が情報のやりとりや同期に関与すると言われており、一部の研究者たちはこの特異な波形こそが意識の基盤であると述べています。
さらに興味深いのは、この“進行波”を使ったモデルが数学的に厳密解を持ち、AI内部の判断過程を“見える化”できるという点です。
これまでは捉えづらかったAIの思考パターンを、波として描き出すことで解き明かせるかもしれないのです。
AIの中ではいったいどのように波が生まれ、意思決定に関わっているのでしょうか?
研究内容の詳細は2025年1月3日に『PNAS』にて公開されました。
目次
- 脳とAIの内部を移動する不思議な「進行波」
- 機械的ニューラルネットワークと生物学的ニューラルネットワークを繋ぐ