(※ピクセルとは、デジタル画像を構成する最小単位の点です。一つ一つのピクセルが色や明るさの情報を持ち、それが集まって写真や映像を作り出します)
より具体的には
①まずは大きな波が全体をスキャンして背景と物体をざっくり分離
②次に物体の内部で“細かい波”が形を変え、複数の物体があれば別々の波が生まれる
という2段階の流れが観測されました。
この振る舞いは、神経科学者が脳の視覚野で見る「局所的な同期」や「大域的な波」と酷似しており、まるで“脳をまねた”かのような動きを示しています。
さらに画期的なのは、なぜ「この波」が「この物体」を際立たせるのかを数学的に説明した点にあります。
従来のAIでは、ネットワークの内部構造が複雑すぎて、どうしてその判断に至るのかを追いきれない“ブラックボックス問題”がありました。
しかし今回、固有値や固有ベクトルなどの数学的ツールを使って波の伝播を解析することで、「波がどのようにオブジェクトを分離するか」を明確に読み解ける可能性を示したのです。
言い換えれば、“AIの頭の中”を可視化する大きな手がかりを手に入れたわけです。
「AIの挙動を厳密解で説明する」――これはブラックボックス問題への大きな突破口になり得ます。
さらに興味深いのは、一度パラメータが整えば、シンプルな図形でも、自然風景でも、同じ波の仕組みで切り分けられること。
従来のディープラーニングモデルは「特定のデータセットに最適化される」という傾向が強いのですが、この研究は「波が持つ汎用的な分割能力」を示唆しています。
つまり、水たまりに石を投げ込んだときにできる波紋が、大きな波でも小さな波でも広がるように、ひとつの基本ルールがいろいろな画像に適応できるのです。
本物の脳の進行波のように、人工ニューラルネットワークの進行波もまた情報処理を行う上での恩恵を与えていたわけです。
脳を模したAIは昔から「ニューラルネットワーク」と呼ばれてきましたが、実際の脳機能をどこまで再現できているかは未知数でした。