トータスメディアとの交渉が明るみに出ると、これに反対する機運が広がった。
9月18日、オブザーバーとガーディアンの約250人の記者が参加してNUJの緊急会議が開かれ、売却に反対する動議を採択した。12月4日と5日にはロンドンのGMG本社の前で両紙の記者、著名人、議員ら100人を超える人々が抗議ストに参加した。左派系知識人、俳優らもスト支持のメッセージを送った。記者らは翌週もストを決行する予定だったが、その矢先に買収確定が発表された。
スコット・トラストによって守られるはずと認識されてきたオブザーバーの売却話は記者・編集者にとって寝耳に水だった。新興のデジタルメディアが新所有者となった場合にオブザーバー職員の雇用が脅かされるのではないか、電子版だけになるのではないかという懸念も出た。
2023年12月に発表された財務状況によると、トータスメディアは22年12月時点で売り上げが約623万ポンド。これは前年比で15%増加したが、税引き前の損失は463万ポンドで前年比45%増である。赤字メディアが売却先となることへの不安感もあった。
有料化への懸念もハーディング氏は今後5年間で2500万ポンドの投資を行うとしているが、これで紙の発行と独自のウェブサイトの開設、その維持のための費用をカバーできるのかどうか不明だ。現在、オブザーバーの記事はウェブサイト上で無料で閲読できるが、ハーディング氏は買収後に有料化する予定だ。
ガーディアンやオブザーバーはウェブサイト上での記事の閲読を原則無料化しており、オブザーバーの新サイトが有料化されれば、払えない人を阻害することにもなり得るだろう。
記者らの不信感を取り除くため、トータスメディアはオブザーバー職員の雇用継続を約束し、フリーランス契約の人は25年9月まで契約継続を保証すると述べている。スコット・トラストはオブザーバーとの関係を維持し、トータスメディアへの大手投資者となるほかに取締役会にも入る。同メディアの経営陣の上部組織となる「独立編集理事会」にも籍を置く。