世界最古の日曜紙と言われる英オブザーバーが新興デジタルメディア「トータスメディア」に売却されることが決まった。

昨年12月5日夜、同紙と日刊紙ガーディアンを発行するガーディアン・メディア・グループ(GMG)、GMGを所有する慈善組織スコット・トラスト、トータスメディアが原則合意した。

前日から2日間にわたって全国ジャーナリスト労組(NUJ)に所属する両紙の記者らが売却交渉停止を求めるデモを行っていたが、その声は届かなかった。

今回の売却は、ソーシャルメディアの普及やデジタル化の進展で伝統的な新聞の所有者が次々と変わっていく流れの1つともいえる。

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販売・広告収入減で

オブザーバー紙は1791年に創刊され、1993年、GMGの傘下に入った。スコット・トラストは36年に設置され、ガーディアンの財政上および編集上の独立性を永遠に維持し、報道の自由とリベラルな価値観を商業的・政治的な干渉から守ることを目的とする。

両紙は編集室を独自に維持しつつもウェブサイトを共有し、英国の中道左派論壇の一角を担ってきた。

売却話が最初に報道されたのは2024年9月、GMG社の3月決算の数字が発表された時だった。

「広告市場の減速と印刷業界に対する持続的な構造的圧力」によって、収入は前年比2.5%減の2億5780万ポンド(約496億円)に。70人の編集スタッフを抱えるオブザーバーは21年時点での発行部数13万部強であったが、現在までに約10万部に落ちていると推測される。

GMGのアンナ・ベイツン最高経営責任者によると、オブザーバーは「今後3年以内に確実に赤字化する」と予測され、将来を考えざるを得ない状況にあった。

ここに登場したのがトータスメディアであった。保守系高級紙タイムズの元編集長でBBCのニュース部門の責任者だったジェームズ・ハーデイング氏が19年、元駐英の米大使マシュー・バーザン氏と立ち上げた会員制のデジタルメディアである。「トータス(亀)」という名称が示すように、取材と制作に時間をかける「スローニュース」の発信を柱とする。

反対論、強く