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みなさん、2021年の「旅行満足度ランキング(リクルート社のじゃらん宿泊旅行調査)」で一位の県はどこだと思いますか?

沖縄?北海道?いえいえ、和歌山県なんですよ!

それで、今回、ただ旅行行くだけでなく、昔からのクライアントが紀伊半島の先端の僻地で会社をやってるので、彼に案内してもらいながら色々と魅力を満喫してきた件についての記事を書こうかなと思っていたんですけど…なんと!

今現時点で最新版の「2022年ランキング」を見ると、一位は大分県になっていて、和歌山は10位圏外までふっ飛ばされていて唖然としました。話が違う(笑)

ただ、このランキングを過去にさかのぼって見ると、コロナ前までは沖縄とか北海道とか京都とか、そういう「定番」が一位になることが多かったみたいなんですね。

それが、「コロナ後」になってから10位近辺まで僅差で並ぶ入れ食い状態になっていて、”人々の好みが変わった”ところがあるんじゃないかと思いました。

もちろん、北海道や京都や沖縄や・・・みたいな「観光地の定番」も入ってるんですが、大分や福井、石川など、「ある意味で地味な」県が十位近辺まで数ポイント差で競い合ってる状態になってる。

「コロナ前後で、人々が旅に求めるものが変わった」っていう話を、ついさっきたまたまこの動画↓をスマホがおすすめしてくれたんで何気なく見たら、「旅系YouTuber」のスーツ氏が言ってたんですが…

「定番」以外の、それぞれの県が自分たちの魅力をちゃんと伝えて評価されるサイクルが回り始めているところがあるんじゃないかと。

「定番化された観光地にばかり人が集まる」って、あらゆる意味で良くないですよね。

その「定番地域」がオーバーツーリズムで疲弊するっていうのもありますが、そもそも沖縄や北海道や京都にしか「魅力がない」という世界観っていうのは非常に貧しいもので、そういう「貧しい世界観」に最適化して経済を動かしていくと、色んな意味での「多様性」が社会から消失していって生きづらい世界になっていくわけですよね。

だからこそ、「定番以外の多様な観光地」がいかにフィーチャーされる世界に持っていくか?という話が重要になってくる。

今回の和歌山旅行は、単に那智の滝見に行って(これも素晴らしかったけど)、道の駅でお土産買って、温泉入って帰ってきた・・・だけではなくて、現地に根付いて事業やってるクライアントのS氏に連れられて色んな人に合ったり穴場に連れてってもらったりしたので、そうやって

「定番」以外の魅力が拾い上げられるサイクルを作り、「多様性」が経済の中で自然に還流する展開にしていくために必要なことは何か?

…を考える記事を書きます。

1. 「グローバル&ネット時代」が生み出す”ロングテール”という構造

まず、ちょっと「理論的」な話からしたいんですが、そもそも、「できるだけ定番以外の魅力ある観光地を掘り起こしたい」というエネルギーは、資本主義的構造の自然な帰結として一応存在しているはずなんですよね。

さっき貼った動画の中で、”スーツ氏”(年間250日以上国内外を旅行し続けているYouTuber)が、

比較的マイナーな目的地に行くほど、「同じアクティビティ」をしても単純に値段が安い事が多くて満足度が高まる

…という趣旨の話をしていて、なかなかナルホドと思ったんですよ。

今回和歌山県行って泊った宿、以下写真のような絶景の貸し切りの露天風呂が部屋についてていつでも入れて、一泊二人合計で1万5千円ぐらいでしたからね(多分、場所によっては貸し切り露天風呂が部屋についてれば二人で最低3万円とか、6〜7万円ぐらいになってもおかしくないはず)。

弘法湯温泉

「温泉に入る」「グルメを楽しむ」「川遊びをする・海遊びをする」「キャンプとかラフティングとか登山とか釣りとかアウトドア・レジャーを楽しむ」・・・のどの点を取っても、「マイナー観光地」のほうが明らかに安い事が多いという単純な事実があるんですよね。

だから、「定番以外を求め、隠された魅力を発掘していこうとするエネルギー」自体は、もともと資本主義的なおカネの流れの中に内包されている。

こういうのを「ロングテール型」消費とか言いますが…

以下の図のように(縦軸が売上)、「売上が多い売れ筋品目(緑色)」だけが消費の大部分を占めているわけではなく、一点ごとの売り上げは少ないがとにかく沢山の品目がそれなりにちゃんと売れている「ロングテール」部分が生まれてくるのがネット時代の当然の帰結としてある。

ウィキペディアの「ロングテール」項目より

単純化した説明をすると、「リアルな小売店」はAmazonや楽天とかのウェブ店みたいに際限なく多品目をおけないのと同じで、ネット時代以前は、「カタログ」に載せられる量に限界があったので、みんな「定番」の行き先にしか行けなかったわけですよね。

ネット時代になって、果てしなく色んなマニアックな行き先を発掘できるようになって、好みがバラけることで、「ロングテール」部分でもちゃんと商売が成り立つようになってくる、という「時代の流れ」自体は存在する。

例えば、30年前には「皆が知ってる芸能人」っていうのが確固としてあったけど、今は「好きなYouTuber誰?」って仲の良い友達に聞いても「えーその人知らない」ってこと増えましたよね。

さっきの「スーツ」氏も登録者数180万人の日本の旅系YouTuberでトップの人ですが、知らない人は知らないと思います。

また、「グローバル」との兼ね合いによってもこのロングテール化は進むんで、というのは、

外国人:日本のアニメが好きなんです 日本人:へえ、そうなんだ。例えば一番好きな作品とかってある? 外国人:それは、●●●と、✗✗✗ですね・・・ 日本人:え、ごめん、知らない・・・(気まずい) 外国人:あ!ど、ドラゴンボールもまあ好きです。あと最近では呪術廻戦とか!(あわてて)

こういう体験↑したことある人結構いると思いますが、最近のインバウンドの流行も似たような感じで、「ロングテール」部分を再発見させていく流れが起きている。

例えば日本人は近所の人しか知らなかった山口県の神社が、CNNが「日本の美しい風景31選」に選んだとかで大人気になったりしている。

海外の評価でブレイクした長門市の景勝地|デスクネッツ運営『ふるコミュ』

京都の伏見稲荷神社的な赤い鳥居の連鎖と海沿いの絶景がセットになっていて、「今までこれの魅力を日本人は気づいてなかった」のもなんだかちょっと不思議な気もします。