【5】有鉛ガソリンを発明した男、トーマス・ミジリー・ジュニア:自らの発明品に命を奪われる
トーマス・ミジリー・ジュニアは、有鉛ガソリンとフロンガスという、20世紀で最も物議を醸した2つの発明で知られる。これらの発明は当初、その実用性で称賛されたが、長期的な環境と健康への影響は深刻なものだった。晩年、ポリオに感染して麻痺したミジリーは、ベッドから起き上がるための滑車とロープのシステムを考案した。1944年、彼はこの装置に絡まって窒息死しているのが発見された。公式には事故死とされているが、彼の発明に対する批判が高まっていた時期だったこともあり、企業の陰謀によって殺害されたという説もある。
【6】ユージーン・マローブ:常温核融合の封じられた夢
常温核融合の可能性を提唱した科学者ユージーン・マローブは、エネルギー革命の先駆者とされていた。常温核融合は、太陽の核反応を室温で再現し、無限のクリーンエネルギーを生み出す技術として期待された。しかし、1989年の発表後、科学界から「非現実的」として強い批判を受けた。
マローブはMITを辞職し、研究を擁護するために精力的に活動。だが2004年、彼は幼少期の家で暴行を受け死亡。事件は家賃を巡るトラブルとされたが、常温核融合を巡る利害関係者による暗殺説が根強い。彼の死は、常温核融合研究の停滞を象徴する事件とされている。
【7】ギルバート・ルイス:ノーベル賞に愛されなかった天才
化学結合の基礎を築いたギルバート・ルイスは、生涯41回ものノーベル賞候補に挙がりながら一度も受賞することはなかった。ライバルのアーヴィング・ラングミュアが賞を受けた際には、ルイスの研究を基盤にしていたと指摘され、学会内の政治的圧力がささやかれた。
1946年、ルイスはシアン化水素を扱う実験中に死去。その状況から事故とされたが、競争の激しい学界での恨みが関与していたのではないかとも言われている。彼の死は、科学の栄光と影を浮き彫りにした。
【8】ボリス・ヴァイスファイラー:チリで消えた数学者
数学者ボリス・ヴァイスファイラーは、1985年にチリの秘境で行方不明となった。現地の「コロニア・ディグニダ」という謎のドイツ人居住地が彼の失踪に関与している可能性が高い。居住地は当時のチリ独裁政権と結びつき、人権侵害や武器取引が行われていたとされる。
CIAの機密文書では、ヴァイスファイラーがスパイ容疑で拘束され拷問を受けた可能性が示唆されている。彼の数学研究が軍事用途に利用できるとされたことが悲劇を招いたのではないかとの推測もある。
【9】ゲオルク・ヴィルヘルム・リヒマン:雷に撃たれた科学の先駆者
1753年、リヒマンは雷の電気エネルギーを測定しようと実験を行っていた。その際、落雷によって命を落とした彼は、科学実験中に亡くなった最初期の記録的な人物とされている。
当時、雷は「神の怒り」と見なされ、リヒマンの実験は宗教的な反発を招いていた。彼の死を事故とする見方が一般的だが、科学に対する反感から計画的に仕組まれた可能性も一部で議論されている。