ですから、先の声マネも決してシャチの口から発せられているわけではありません。
ではシャチはどこから声を出しているのでしょうか?
シャチの声はどこから出ているの?
シャチの発声の仕組みは私たちとはまったく違います。
ヒトを含む哺乳類のほとんどは口と咽頭の動きを使って音声を出しますが、これに対してシャチは声帯を持っていないので、口から発声することができません。
そこでシャチは「鼻腔(びくう)」すなわち「鼻の穴」を使って声を出しています。
鼻の穴といっても彼らの鼻は人間のように顔の先端にはついておらず、頭のてっぺんにあります。
彼らは通常、鼻の穴にある音響器官を使って音を出し、それをおでこ辺りにある脂肪組織「メロン」に通過させて、音を収束させたり、強度を調節したりしているのです。
これによって、シャチは主に3種類の音を水中で出しています。
1つ目はホイッスル音で、口笛のような高い音であり、仲間同士のコミュニケーションに使われます。
2つ目はクリック音で、単発の短い音であり、獲物を探したり、周囲の環境を把握するためのエコロケーションに使われます。
3つ目はパルス音で、テンポの速い繰り返し音であり、群れ全体の注意を引いたり、何らかの危険を感じたときの警告音として利用するとされています。
このようにシャチは鼻の穴を使って、人間の声マネをしていたのです。
ただし、すでに予想はついているかもしれませんが、声マネができることと言葉を理解していることは別であり、研究者らも「ウィキーは単語の意味を理解しているわけではない」と述べています。
しかしシャチは非常に賢い動物であり、人間とも深いレベルでのコミュニケーションを構築できるため、訓練次第では言葉の意味も学習できる可能性は十分あります。
そうなると(あくまでSF的展望しかありませんが)、いつか私たちとシャチが人間の言葉を使って簡単な会話ができる日が来るかもしれません。