ちなみに、日本に対しては、「政治的に米国に従順なだけだが、日本は他の国と違い、スポーツや文化の交流といった他の分野では我が国と交流している」と説明し、日本を称賛することを忘れなかった。同外相の発言内容は広範囲に及ぶ。メディアで既に報じられているからここでは省略する。
同外相(74)はプーチン大統領の外交ブレインとして2004年3月から20年間以上、モスクワの外相を務めてきた。ラブロフ氏はプーチン大統領の信頼を得ており、その結果、ロシアの外交政策において広範な権限を与えられているという。一方で、ラブロフ氏もプーチン氏の指示を忠実に実行しており、この協力関係がロシア外交に安定性をもたらしている面は否定できない。両者の外交方針は、アメリカやNATOを牽制し、多極化した国際秩序を推進することに焦点を当てている。
同外相の口からはプーチン大統領が語らなかったことが飛び出すことはないから、爆弾発言とかスクープ情報といったものはほとんど期待されない。その代り、大統領の発言を追認するという役割を演じる機会が多い。その意味で側近の忠誠を重視するプーチン氏にとって無難な外相だ。外相が大統領を凌ぐプレゼンス(存在感)を有していたならば、モスクワでは20年間も外相のポストを担うことはできない。
ところで、ラブロフ外相は平気でうそ発言をする。なぜならば、プーチン氏が虚言を発するからだ。外相はそれを修正したり、是正することはなく、繰り返すだけだ。例を挙げて説明する。2023年3月3日、ラブロフ外相はインドの首都ニューデリーを訪問し、そこで開催された国際会議でウクライナ戦争に言及し、「わが国は戦争を止めようとしている」、「(ウクライナ)戦争はウクライナの攻撃で始まった」と堂々と語ったのだ。外電によると、会場から笑いが漏れたという。その笑いの中には、「嘘」を平気で喋るロシア外相の厚顔無恥さに対する驚きも含まれていただろう。ラブロフ外相はプーチン大統領の政策を外に向かってラッパを吹く役割だから、自身の役割を果たしただけに過ぎなかったのだろう。