そこで私は『被災者を背後から撃つ者』全文を形態素解析と呼ばれる手法で分析して、客観的な数値から何が書かれているか明らかにすることにした。

形態素解析とは、意味を持つ最小の単位「形態素」まで文章を分解して、品詞、変化、それぞれの結びつきなどから文章の構造や文意を解明する手法だ。このような言語解析は学術研究や市場調査、企業のクレーム処理等で使用されている。

結論を先に書くなら、このコラムは「馳氏を支える森喜朗元首相のお膝元]を[保守的な土地柄」と主張するため、様々な逸話を紹介しながら「能登ウヨ」なる突出して特徴的な名詞を持ち出した文章だった。これを模式図化すると以下のようになる。

「被災者を匿名で背後から撃つ『能登ウヨ』の卑劣と陰湿」という表現は、能登または石川県の様子と解釈されて当然だ。もし意図は別物と言うなら、文章が下手くそすぎて毎日新聞の社内にしか真意が伝わらないだけである。

井上記者は保守的な土地に「能登ウヨ」という卑劣で陰湿な人々が跋扈していると、何ひとつ客観的な証拠を示さないまま願望を全国紙に書いたのだから被災者から批判されて当然だ。

かつて朝日新聞の『天声人語』で深代惇郎記者は、「役所や企業は、消費者や新聞が批判する。しかし、批判する新聞を批判する強力な社会的な仕組みはない。批判されない社会組織は、当事者がいかに善意を持っていても、独善と退廃の芽をはぐくむ。」と自戒した。

さて毎日新聞はどうだ。

『被災者を背後から撃つ者』は独善と退廃そのものである。

毎日新聞が災害や事故を政治利用したのは、能登半島地震が初めてではない。井上記者は2011年に『検証・大震災:福島第1原発事故、収束作業 覚悟の苦闘、黙々と続く』を他の執筆者とともに担当したが、原子力災害報道からALPS処理水を「汚染水」と連呼した報道まで、毎日新聞は都合のよい証言や身内の言い分だけ採用するなど偏向どころか歪曲が甚だしかった。 卑劣かつ陰湿な腐臭を放つ存在は、毎日新聞に他ならない。