湘南のGKや最終ラインからのパス回しが安定し始めたのは、第18節名古屋グランパス戦の後半や第19節FC東京戦あたり。基本布陣[3-1-4-2]のウイングバックが安易に自陣後方や味方センターバック付近へ降りなくなったこと、そして3センターバックも極力ペナルティエリアの横幅から出ない立ち位置をとり、外側と内側(左右)どちらにもパスを出せる状況を作ったこと。こうした攻撃基盤が出来上がったことが、昨年7月の公式戦4連勝に繋がった。
最終スコア5-0で大勝した7月14日の第23節ジュビロ磐田戦でも、MF鈴木淳之介、DFキム・ミンテ、DF髙橋直也による3バックは概ねペナルティエリアの横幅に収まる立ち位置をとり、中央とサイドどちらにもパスを出せる状態を維持。これによりパスコースを限定しきれなかった磐田陣営の守備の出足は遅れていた。
磐田戦では池田昌生と茨田陽生の両MF(2インサイドハーフ)が早いタイミングで相手最終ラインと中盤の間へ立ち位置を移したため、攻撃配置が[3-1-6]に近い形となっていたが、試合を重ねるごとに湘南最終ラインと2インサイドハーフの距離感は良い塩梅に。相手のボランチ(守備的MF)やサイドハーフの斜め後ろに立ち、味方の縦パスを引き出すのが得意な池田と茨田の活躍により、湘南は昨年7月10日の天皇杯3回戦(東京ヴェルディ戦)以降も連勝を飾る。同年8月には当時J1リーグ首位に立っていた町田ゼルビアの堅守をも打ち砕いている。一時はJ2リーグへの降格危機に瀕したものの、湘南は7月以降の連勝と前述の鹿島戦からの4連勝で勝ち点を稼ぎ、J1残留を果たした。
新加入の藤井も魅力に感じている、昨夏の攻撃基盤を今季に活かせるかが、湘南の浮沈の鍵を握ることは言うまでもない。配球力が高いMFゼ・ヒカルド(川崎フロンターレから期限付き移籍)や、Jリーグ屈指の俊足を誇る藤井が湘南のパスワークに馴染めるか。この点も見どころのひとつだ。