事業的には成功という判断も

 提訴の発表からわずか6日後、ポケットペアは「パルワールド」のPS5版を日本を除く全世界68の国と地域で発売したと発表した。なぜ係争中にもかかわらず、同社は世界発売に踏み切ったのか。

「『すでに発売が決まっていたから』といえばそれまでだが、ポケットペアとしては特許侵害はないという立ち位置であり、今後もその旨を主張していくことになるので、そうである以上は自主的に発売を取りやめる理由は存在しないということになる。判決の確定や和解は1年以上先になる見通しであり、損害賠償や和解金を支払うことになったとしても金額は数十億円程度だろうから、パルワールドの現在および将来的な売上規模からみれば十分に賄える金額。PS5向けタイトルの開発にも多額の費用がかかっており、それを回収する意味でも、今後の任天堂との係争の行方次第でサービス提供が停止になったとしても、それまでに稼げるだけは稼いでおこうという判断はビジネス的には妥当といえる」(ゲーム業界関係者)

 弁護士はいう。

「裁判の争点は特許侵害の有無なので、現段階でポケットペアが新たに別のプラットフォームで『パルワールド』をリリースするという行為が、判決に何か大きな影響を与えるということはないのではないか。あるとすれば、任天堂への損害賠償の金額や和解金が上振れする程度だろうが、PS5上での売上規模に比べれば無視できる範囲に収まる可能性もある。知的財産の係争は結局のところ、訴えられた側がサービス提供を継続するか停止するか、訴えた側に金銭をいくら支払うかという話なので、ポケットペアとしてはサービス停止になったとしても、損害賠償や和解金を大きく上回る売上をあげることができれば事業的には成功という判断も現実的なものとなってくるだろう」